アイスワインは厳冬にマイナス8度以下になってから、凍ったブドウを摘み取り、凍ったままの状態で搾汁して造るワインです。量も少なく、凍て付く寒さの中で作業をしなければなりません。22キログラムのブドウから3リットルしか果汁がとれず、それだけに出来上がったワインは、芳醇な香りと貴賓高い味でワインの中の超ワインとして評価されています。日本では、冷凍ブドウを使ったものをアイスワインと称して販売していますが、本物の味を知っていただきたく当社がカナダ(ロイヤル・ディ・マリア社)のワイナリーに依頼してボトリングした特別のワインです。
当社は、2003年から、カナダ、ロイヤル・ディ・マリア社のアイスワインを販売しております。
当時はまだアイスワインを知っている人が殆んどいなかったため、まず試飲をしていただきました。10人中8人の方は美味しいと感嘆の声をあげ、年々お客様からの需要が増えてまいりました。
そこでこのたび、私達スタッフはカナダのワイナリー巡りをして、アイスワインについてのより一層の知識を深めると同時に、ロイヤル・ディ・マリア社の評価や他社との比較を試みようと思い現地視察をして参りました。
10月24日 成田空港を飛び立つこと13時間。カナダ東部最大の都市トロント国際空港着。空港にはカナダ在住でワインアドバイザーをしている友人が迎えにきておりました。
空港からタクシーで約1時間30分。世界の観光地ナイアガラフォールズへ。
夜、到着したので、ライトアップされたナイアガラの滝を見に行きましたが、闇の中に赤や黄色のライトで照らし出されるナイアガラの滝は、人工的で想像していたスケールや美しさを感じることができずチョット気落ちしました。
翌朝、ロイヤル・ディ・マリア社のジョセフデマリア御夫妻が、ホテルに迎えにきてくださってワイナリーに案内していただきました。ロイヤル・ディ・マリア社のワイナリーは、オンタリオ湖の近くでトロントとナイアガラフォールズの中間くらいに位置しております。ホテルからワイナリーへ向かう途中、オンタリオ湖畔のレストラン「レイクハウス」で昼食をとりましたが、一人前の量の多さに驚きました。よほどこの国の人間の胃袋が大きいのかと思わずにはいられませんでした。
案内されたロイヤル・ディ・マリア社の入り口には鉄扉がオブジェのように置かれていて、それが門としての役目をしていないのが、何か、ジョセフ氏の開放的な人柄に接した感じで好感がもてました。また建物は外壁がオレンジ色のモダンな造りで、シャトーを想像していた私達には一寸意外な感じでした。建物の横に、3m間隔のブドウ棚が整然と視界から消えるまで廣がっています。ヴィダル、リースリング、カベルネフラン、カベルネソーヴィニヨン、シャルドネ、ゲヴァルツトラミネール、ピノ・ノワール、バッコ・ノワールなど17種類のブドウが植えられていて、広さは約25エーカー(3万坪)有るとの話です。
ロイヤル・ディ・マリア社 |
門塀の前で |
ブドウ回廊の中で |
中に入るとそこには世界の名だたるコンクールで受賞したトロフィーや賞状が所せましと飾られています。中でも、エリザベス女王が2002年カナダ訪問の際、政府主催の晩餐会でロイヤル・ディ・マリア社のアイスワインをお召し上がりになり、大変お気に召してお求めになったローヤルボックスが飾られております。
その中の1本2001年カベルネフランをご馳走になりました。それはもう飲み物というより芸術作品に出会ったような感動で、注がれたグラスをかざすと薄紅色の淡い透きとおったワイン液の中から、甘い花蜜の香りがして、まるで、小さなグラスの中に桃源郷を見る想いです。あまりの美味しさに発注したところ、在庫が48本なので半分の24本しか売ることが出来ないと言うことでしたが、カナダ視察の記念に求めました。
コンク−ルでの受賞メダル |
獲得したトロフィーの数々 |
ローヤルボックス |
カナダには約450件のワイナリーがあるそうで、このうちアイスワインを醸造しているところは300社ほどあるとのことです。しかしそれらのワイナリーは普通のワインやスパークリングワインも造っていて、アイスワインだけを造っているのはデマリア1社だけという話です。それだけにアイスワインにかける思い入れはひとしおで、アイスワインスペシャリストの称号を取得していることからもうかがい知ることが出来ます。
この職人根性ともいえる誇りが、世界のワインコンクールの舞台で証明されております。
国際機構(O.L.V)承認の元に、ボルドーで開催されるワインコンクール、シタデル・デュ・ヴァン(Les Citadelles du Vin)は世界的に最も権威のあるものとされています。
このコンクールにおいて最優秀賞、特別賞など5個のメダルを受賞すると言うワイン史上例のない評価を得ております。
受賞を報じた新聞 |
ヴィンテージメニュー |
ギャラリーには、ヴィンテージワインの価格が貼ってありました。
2000年シャルドネは30,000ドル、日本円に換算すると380万の値がついている品もありました。さすがこれはテスティングさせていただけませんでした。ただヴィンテージ品に限らず殆んどの品が、在庫薄で2007年の仕込みを待たなければならないそうです。
というのもジョセフ氏自らがブドウの栽培から醸造を手がけているので大量生産ができず、カナダでは「幻のワイン」として珍重されているという話です。
このことは、トロントのCNタワーの最上階レストランで夕食をご馳走になった時、支配人がワインセラーに案内してくださいました。
オーナーがワインコレクターということで15坪もあろうかと思う広いワインセラーに数万本の世界のワインが取り揃えてありました。1本100万円以上のするヴィンテージワインは別コーナーに並べられていて、その中にロイヤル・ディ・マリアのアイスワインも何本か収められておりました。支配人の話では、ジョセフの造るアイスワインは、カナダでは勿論、カナダが世界に誇るナンバーワンのワインで、どこのワイナリーでもこの輝く味は、まねができないと自慢をしておりました。そして日本から来た私達がジョセフデマリアのワインを仕入れることが出来るのは、幸運だというのです。
ワインリストを見たら2004年リースリングが500ドル(6万円)カベルネが1,800ドル(20万円)の値段がついているのには驚きました。
ワインアドバイザーの友人はボルドーのソーテルヌ地区の最高級デザートワインの「シャトーデュケム」に匹敵する価格だと言うことで、ご当地とはいえ評価の高さに認識を新たにしました。
因みに今回当社が仕入れたローヤルボックスに収められている2001年カベルネフランは現地カナダでは20万円の値がついています。
ナイアガラの洗礼を受けるスタッフ |
翌日は先ずナイアガラ観光をしました。闇の中で見たナイアガラとは違い轟々と水しぶきを飛散させて流れ落ちる滝の迫力とスケールはやはり魅了するものがあります。ただ残念だったのはナイアガラ観光のハイライトと言われている「霧の乙女号」が冬季休業中で乗船体験できませんでした。友人の話では、この体験なくしてナイアガラを語るべからずとのことです。
又、船がだめならヘリコプターでと思いましたら、これも雨模様で断念しなければなりませんでした。
ナイアガラ観光のあとは、カナダ視察の目的であるワイナリー巡りをしました。
多くのワイナリーは、ワイン街道と呼ばれているオンタリオ湖沿いに集中していて、その数は主だったところでも80社ほどあります。
日本のデパートで見かけるピリテリー(Pillitter)やイニスキリン(Inniskillinn)もこの街道沿いに軒を並べ、旅行客にテスティングをさせております。テスティングはアイスワインについては有料のところが多く、一杯3ドルから5ドルほどで、バスを連ねた観光客で賑わっております。
これらのワイナリーはアイスワインだけでなく普通の白や赤のワインやスパークリングワイン又遅摘みのものなど、いろいろの種類があってテスティングしているうちにわけが分からなくなる人もいるようです。
どこのワイナリーでも、ワインコンクールの賞状やトロフィーを飾ってありますが、ワインのコンクールは各国、各都市などピンからキリまであるようで、ワインアドバイザーの友人によれば、沢山の賞状が貼ってあってもロイヤル・ディ・マリア社の賞状とは格が違うとの解説でした。
各ワイナリーでリースリングやスパークリングワインのテスティングをしましたが、ロイヤル・ディ・マリア社の味を体感した私達は、それらが水ぽっくて気の抜けたワインのような印象をうけました。
ジョセフデマリア氏が言うには、マイナス8度以下になってブドウを摘み取ると22キログラムから3リットルの果汁しか取れないそうです。ところがワイナリーによっては、12リットル以上の果汁を搾汁しているところもあるそうです。それゆえアイスワインの品質にたいする審査を厳しくしなければ、カナダアイスワインの価値を下げることになりかねないと彼は憂いておりました。
大きなワイナリーの場合、ワイナリーのオーナーと経営者、醸造者がそれぞれ別々で、ジョセフデマリア氏のように三役一人と言うのは小さなワイナリーではあることですが、ただそれが世界に名を馳せるようなワインを生産しているところは稀有なそうです。
一通りワイナリー巡りをし、お土産と味比べのために各ワイナリーのアイスワインと遅摘みワインを持ち帰れるだけ買い求めてまいりました。帰国して社員一同で品評会をしたところ全員が、ロイヤル・ディ・マリア社のアイスワインの質の違いを認識することになりました。
当店は、新千歳空港に於いてハスカップを主としたおみやげ店です。ソムリエのいるワイン専門店ではありませんが、アイスワインにおいて、ロイヤル・ディ・マリア社というよき出会いを得たことを誇りにして、より多くの方に、アイスワインの美味しさを知っていただくよう努める所存でおります。
(株)ハスカップ 三ツ野由希子