石井ふく子さんの本
石井ふく子さんのお名前を最初に目にしたのは、今から数十年前、東芝日曜劇場のテレビで知った。
今年の春、東京ニューオータニの向かいにある維新号で食事をしていた折、隣の席に石井先生がおひとりでお座りになったので、「渡る世間は鬼ばかり」が終わって残念でしたと申し上げたところ、9月に特別放送なさるとのお話し。
9月2週にわたって放映されたのを観た。
これまではただ漫然とストーリーの展開を観るだけだったが、作品をお創りになっている先生にお目にかかったせいか気を入れて観た。
その結果20年も続くと言うことは、こういうことなのかと感じることが多々あって、10月、上京の折,TBSへハスカップ持参で伺った。
勿論アポなしなのでお目にかかれるとは思わなかったが、対応して下さった秘書の方がとても感じのよい方で、先生のお人柄を映しているのではないかと想像した。
帰ってきたら、空港の店に速達で先生からお手紙を添えて一冊の本が同封されていた。
花柄のきれいな便箋に「お恥ずかしいですが」と達筆な文字の礼状を頂戴した。
驚きと同時に、数え切れないほどのファンからの贈り物やファンレターで礼状等書く暇もないはずなのに、一寸袖触れ合っただけの人間に、この様な心遣いをなさって下さるということは、何か御仏の心に触れたような感覚で、感激ともったいないという気持ちになった。
本の題名は「ありがとう、またね・・・」
夕刊フジに平成20年1月から連載していた「ちょっといいかな」をまとめたそうで、銀幕、テレビ、舞台で顔なじみのスターとの交流の話が満載で1ページ、1ページドラマの脚本を読んでいるようなわくわく感がある。
渡る世間の出演者はもちろん、原節子、京マチ子、池部良等の往年のスターや奈良岡朋子、渡辺美佐子、杉村春子といった私の好きな役者さんの話も興味がそそられる。
それに泉ピン子さんが浪花節の大御所 広沢竜造の娘という。
あの独特のキャラクターには芸人のDNAが天性備わっていることを知った。
本の中で愉快だったのは、池内淳子さんとの舞台稽古の中で「そんなものできるか、バカ」と池内さん。
「やれ、バカ」と先生。
このやり取りには信頼し合った者同士のほほえましさが伝わってきて、私もバカと言い合える相手が何人いるかなあと思ったら、男友達のバカ顔(づら)しか思い浮かばなかった。
もうひとつ「渡鬼」の中でぎこちない演技をするなと思って観ていた、えなりかずき演じる真の上司役の俳優が大川橋蔵さんの御子息とは意外や意外。
大川橋蔵は若かりし頃、私の憧れのスターであっただけに、父君の様な華のある役者に育ってほしいと余計なお節介心がわいてきた。
読み終わって第一に感じたことは石井ふく子さんのお人柄が、寛容で温かくて慈愛に満ちた方でしかもご自身謙虚でいらっしゃる。
登場人物どなたにもさん付で表記。それに悪口や批判めいた話、暴露的な内容が書かれていない。
一人二人きっと顔は奇麗だけど台詞が覚えられなくて使えなかった脳タリンもいるのではないかと思うけれど、ボツ役者には触れていない。
橋田寿賀子さんの話もドラマ的でほのぼのとした。
それに「7人の刑事」のシナリオをお書きになっていたそうで、昔よく観た番組の一つでした。
願わくばお二人のコンビで「刑事コロンボ」、アガサクリステイの「ポワロ」級のミステリー作品を観せて頂きたいものです。
出演は女優陣が泉ピン子、市原悦子、樹木樹林、床嶋佳子,中越典子。
男優陣は橋爪功、堺雅人、伊東 四朗、中村吉衛門、大杉蓮それに北野武も面白いと思いますが・・・
水谷豊は「相棒」の杉下右京があまりにもはまり役で、好きな俳優ですがイメージを損ねたくないので除外しました。
歳をとるにつれて観るテレビ番組も軽くて目の保養になるようなものを選ぶ様になってきました。
世界遺産、体感トラべリックス、地球絶景紀行、夢列車に乗って、といった旅行気分にひたれる映像が多くなりました。
ドラマ、バラエテイ番組はまず観ない。
唯一観ていたのが「渡鬼」で、なぜかを、考えてみたら,芸達者な俳優に加え、台詞のもっとも感、セットのしつらえ、衣装、持ち物など細部にわたって違和感のない作品にしあげていることではないのか。
いわば手抜き品で無いので観る側も満足感を得れる。
韓流ドラマが人気なのも、しっかりとした作品作りをしていて、あながちイケメン俳優が登場するからというわけでもないような気がする。
日本のテレビがあまりにも粗製濫造で、トレンド役者を起用することで話題作りに終始しているようで、つまらなくて最後まで観る気がしない。
高齢化社会、日がなテレビを観るのは老人層。
老人のハートを痺れさせてくれるようなドラマ、石井先生に託したいですワ!
2012年11月13日
ハスカップとアイスワインの店
新千歳空港ハスカップ
三ツ野由希子