スパークリング日本酒 獺祭
お客様からスマホで撮った写真を示され、「このお酒ありませんか」と尋ねられた。
写っていたお酒の銘柄は「獺祭」。ダッサイと読む。意味を調べようとして岩波の国語辞典を見たが載っていない。然らば諸橋轍次先生の大漢和辞典に頼るしかないか!
暫く、此の辞典をひく機会がなかったせいか埃だらけ。おまけに12巻のどの巻に載っているのか索引を取り出したが重いのなんの。若い頃は辞書をひくのが楽しかったのが、今やインターネット頼り。
獺祭魚 かわをそが捕った魚を四方に並べる様が、人間が祭壇にお供え物をして祭る様子に似ている事から獺祭と呼ぶそうで、転じて作家や詩人が机の周りに参考資料を広げ,故事を引用するなどの様子をも言う。
そう言えば正岡子規が獺祭書屋主人と名乗っていたことを思い出した。
さてこの「獺祭」なるお酒、先日東京高島屋で買い物をしていたら、おひとり様三本限定で売っていた。取りあえず一本求め、翌日三本買って送ろうと思って行ったところすでに完売。
その日の夜、行きつけの料理店で「獺祭」の話をしたら,うちも割り当てでなかなか手に入りませんとの話。
そんな人気のお酒とは思わなかったので、一本でもラッキー。
瓶内熟成のスパークリングの濁り酒で、度数は15度。
日本酒もワインと同じように醸造酒なので瓶内発酵も可能なのかもしれないが、どのような味わいに仕上がっているのか、飲むのが楽しみで、まずは、私のワイン道の師匠ノボテルホテルのマスターソムリエ澁谷昭先生に試飲していただいた。
ゆっくりと瓶の栓を開けかけた途端あわあわと中のお酒が溢れ出してきて驚いた。スパークリングワインのようにシュワットした泡でなく,間欠泉並みのダイナミックな泡でアワテふためいた。洒落。
精米度50%で大吟醸の造りとはいえ米糠、麹の匂いが強くて吟醸酒特有の香りを感じ取ることができなかった。呑むとアルコールのきつさが喉に来て、何かどぶろくををジンやウオッカで割ったような味がして、大人気の理由が分からない。
澁谷先生は「青リンゴと米の香りがしますネ」とおしゃって美味しいとも、不味いともおしゃらない。大御所たる所以を垣間見たような気がする。
最近は、日本酒もワインに近い軽い淡麗な味わいのものが増えており、昔風のガツンとくる日本酒が少なくなって来ているような気がする。その意味では昔のどぶろくをこジャレタネーミングで売り出しているようにも受け取れる。
原点回帰で、日本酒党の人には受けるのかもしれない。
ワインも、しばれワイン、氷結ワイン、雪摘みワインなどいろいろなネーミングのワインが出ており、アイスワインとの違いを説明しなければならないケースが多くなってきた。
空港は全国津々浦々から人が訪れるところなので、テレビや雑誌で紹介されると、道産品に限らず尋ねられることが多い。
ワインアドバイザーの資格者である以上、ワインに限らずトレンデなお酒に関しては情報をキャッチしなければならないようで、荷が重い。
話は変わるが、先日第一回世界ソムリエコンクール(1983年)で最優秀ソムリエに輝いたジャン リュック・プトウー氏の講演を聞く機会があった。
フランス語の通訳付の講演であったが解かりやすく、人柄の鷹揚さが感じられ好感がもてた。
色々話した中で印象的だったのは、年間何本くらいテスティングなさいますか、との質問に、数えたことはないが大体1週間で1500本ほど。一日200本強。
ヒエ!! オッタマゲイショウン。
口の中がタンニンできりきり舞いになるのではないかと思ったが,飲まずに吐き出すそうで水でゆすいだり、時にはビールで口を漱ぐこともあるとの話でした。
私もテスティングの練習の時は吐き出していたが、10本もテストすると口の中が渋くてとても味の区別など出来なくなってくる。
それと興味深い話だったのは、第1回の世界大会はベルギーで行われ、フランスに凱旋帰国した際、テレビのインタヴューを受けた所、突然10種類のワインが用意され、それぞれのワインの国を当ててくださいと言われた。
前もって聞かされていなかったので、驚くと同時に画面の向こう側で何万人の人が見ているかと思うと足がすくんだそうです。
結果は全問正解でき、世界1の面目を保つことができたという話でした。
それにしてもすごすぎる話です。
ワインの世界に足を踏み入れたとは言え、こんな超人的な人が実存していることに眩暈しそうです。
どうやら私にとっては異次元の世界のようで迷い子になりそうです。
まだらボケ、実は正気の名演技。
2014年 4月21日
新千歳空港 ハスカップとアイスワインの店 ハスカップ
三ッ野由希子